2024年7月26日にセーヌ川で行われたパリオリンピックの開会式で、アレクサンドル 3 世橋の近くに設置された10体の金色に輝く女性像が登場したシーンがありましたが覚えていますか?
彼女たちはフランスの歴史において、文学、スポーツ、政治、芸術の分野で活躍した著名な女性たちを象徴していて、「Sororité(姉妹愛)」というテーマのもと、ラ・マルセイエーズの歌声と共に、セーヌ川の上に設置された巨大な台座から姿を現しました。
この金色に輝く女性像たちは、フランスの女性解放運動に尽力した人物として称えられ、オリンピック精神にふさわしいメッセージを世界に発信しました。
これらの像は、パリの国会議事堂中庭に一時的に展示された後、その後も恒久的な展示場所が検討されています。
パリオリンピックの開会式で登場した10体の金色に輝く女性像の詳細と、その後についてお伝えします。
歴史を刻んだ10人の女性たち詳細
パリオリンピックの開会式に登場した10体の女性像は、フランスの歴史を彩る女性たちを象徴しています。
彼女たちはそれぞれ異なる時代と分野で活躍し、社会に大きな影響を与えました。
シモーヌ・ド・ボーヴォワール (1908-1986)
シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、フランスの著名な哲学者、作家、フェミニストとして世界的に知られています。
彼女の代表作『第二の性』は、女性の社会的地位や性別問題についての画期的な著作で、現代フェミニズム運動に大きな影響を与えました。
彼女は、女性が男性から独立して自己を確立することの重要性を説き、性別による差別の根源を哲学的に分析しました。
シモーヌ・ヴェイユ (1927-2017)
フランスの初代女性欧州議会議長であり、特に歴史的な貢献として、1975年に成立した「ヴェイユ法(loi Veil)」により、フランスで女性が合法的に中絶する権利を獲得しました。
シモーヌ・ヴェイユは、ナチスの強制収容所から生還したユダヤ系フランス人でもあり、その後の政治活動においても、常に人権と女性の権利を擁護する姿勢を示していました。彼女の業績は、今もフランス国内外で広く称えられています。
ジャンヌ・バレ (1740-1807)
ジャンヌ・バレは、世界初の女性探検家として知られ、植物学者としても活躍しました。
彼女は男性に変装してフランスの探検船に乗り込み、ブーガンヴィルの探検隊とともに世界一周を成し遂げました。
彼女の旅は、女性が科学と探検の分野で果たすべき役割を示す象徴的なものとなり、彼女が収集した多くの植物がその後の科学研究に貢献しました。
オランプ・ド・グージュ (1748-1793)
オランプ・ド・グージュは、フランス革命期の著名な作家であり、女性の権利を強く訴えた活動家です。
彼女は特に、1791年に発表した『女性と市民の権利宣言』で知られ、男性と同じように女性にも市民権があることを訴えました。
この作品は、フランス革命の「人権宣言」に対抗するもので、女性の平等な権利を主張した画期的な文書です。
彼女の大胆な主張は、最終的に彼女をギロチンに送ることとなりましたが、その思想は後のフェミニズム運動に大きな影響を与えました。
アリス・ギィ (1873-1968)
アリス・ギィは、世界初の女性映画監督として知られ、映画史における先駆者です。彼女は1896年に映画製作を始め、300本以上の映画を制作しました。
映画業界におけるジェンダーの壁を打ち破った人物でもあり、映画制作だけでなく、女性がこの分野で積極的に活躍できることを示しました。
ジゼル・ハリミ (1927-2020)
ジゼル・ハリミは、フランスの弁護士であり、女性の権利運動家として知られています。
彼女は「Choisir (選択する) 」という運動を共同創設し、女性の中絶権利や妊娠中絶の合法化に向けて闘いました。
ハリミは多くの歴史的な裁判を担当し、女性の性と生殖の権利を守るための法律改革に尽力しました。彼女の活動は、フランスにおける女性の自己決定権の向上に大きく貢献しました。
ポーレット・ナルダル (1896-1985)
ポーレット・ナルダルは、マルティニーク出身の知識人であり、黒人国際主義運動の先駆者です。
彼女はパリでジャーナリストや翻訳家として活動し、黒人文化の重要性をフランス国内外に広めました。
また、彼女は女性の活躍と黒人の権利を擁護する活動家としても知られ、アフリカ系フランス人女性の価値観形成に大きな影響を与えました。
アリス・ミリア (1884-1957)
アリス・ミリアは、フランスのスポーツ選手であり、女性スポーツ運動の先駆者です。
彼女は1922年に世界初の女性のための国際スポーツ大会「女性世界運動会」を創設し、女性のアスリートが国際的な舞台で競い合う機会を提供しました。
この大会は、女性のスポーツ界における権利拡大の重要なステップとなり、後にオリンピックでも女性競技が増加するきっかけを作りました。彼女の努力は、スポーツにおける男女平等の実現に大きな影響を与えました。
ルイーズ・ミシェル (1830-1905)
ルイーズ・ミシェルは、1871年のパリの革命政府 パリ・コミューンでの活動で有名な革命家であり、教育者でもありました。
彼女は社会正義と女性の権利のために生涯を捧げ、貧困層の子どもたちの教育にも熱心で、学校の設立に尽力しました。
彼女の勇気と情熱は多くの人々にインスピレーションを与え、現在でもフランスでは「レッド・ヴァージン(赤い乙女)」と称されています。
クリスティーヌ・ド・ピザン (1364-1431)
クリスティーヌ・ド・ピザンは、中世フランスにおける最初のプロフェッショナルな女性作家として知られ、女性の地位向上を訴えた思想家であり、詩人でもありました。
彼女の代表作『婦人の書』や『女性の都市』では、当時の社会における女性の役割や権利について議論し、女性の知性と能力を認めるべきだと強く主張しました。
彼女の執筆活動は、後のフェミニズム思想に影響を与えました。
一時的な展示から恒久的なものへ
パリ市長のアンヌ・イダルゴは、これらの像を一時的に展示されている国会議事堂内から、恒久的に公共空間に設置するための議論を進めています。
将来的には、パリ18区のラ・シャペル通り沿いに設置されることが検討されていますが、まずは2024年9月23日から10月5日まで、国会議事堂の中庭で一般公開され、その後も国会議事堂で展示される予定です。
これらの像は、女性の権利と自由の象徴として、フランス国内外の人々に新たな視点を提供することでしょう。