パリオリンピック開会式の最後に、セリーヌ・ディオンが歌った「愛の賛歌」は多くの人々を深く感動させました。
開会式がエッフェル塔の花火で華やかに終わらずに、聖火台が空に舞い上がった瞬間に、4年のブランクを経てエッフェル塔から歌ったセリーヌ・ディオンの歌声は、戦争をしている国がある中で開催された、パリオリンピック開会式の素晴らしいクライマックスとなりました。
セリーヌ・ディオンが、エディットピアフのこの曲を歌ったのは、今回が初めてではありません。
2015年、セリーヌ・ディオンは、アメリカン・ミュージック・アワード1週間前の11月13日、パリで起きた史上最悪のテロ事件の犠牲者への哀悼の意を表して「愛の讃歌」を歌い、多くの観客が感動し涙を流しました。
「愛の賛歌」は、歌われている日本語訳とはかけ離れた、悲劇のストーリーが背後にあります。
この曲が持つ背景と、パリオリンピックでの使用理由、そしてフランス語に基づいた日本語訳についてご紹介します。
私たちが普段耳にする訳とは異なる、「愛の賛歌」の本当のストーリーとその深い意味が明らかになります。
「愛の賛歌」真実のストーリー、パリ5輪で使用理由
すべてを超えた情熱の賛歌として知られている「愛の賛歌」。しかし歌詞だけではわからない悲劇が背後にある歌です。
1948年、エディット・ピアフはニューヨークでボクサーのマルセル・セルダンと出会います。
二人の強い個性が引き寄せ合い、セルダンには妻と子供がいましたが、数ヶ月後には非公式のカップルとなります。
1949年始めに、パリ郊外ブローニュに2人は家を購入し、その時ピアフはこの素晴らしい恋愛を歌にしたいと思い、歌詞を作りました。
作曲は、マルグリット・モノが担当し、ピアフはニューヨークのキャバレーで、1949年9月14日に初めて「愛の賛歌」を歌います。
約1か月後の10月28日、セルダンはピアフに会うためにパリのオルリーから出発する飛行機に乗りますが、その飛行機は離陸後数時間で墜落し、彼は亡くなります。
しかしピアフはその日に予定されていたニューヨークでのコンサートを中止せずに、悲しみに打ちひしがれながらも「愛の賛歌」をセルダンに捧げます。
この曲の最後の部分にこのような歌詞があります。
Si un jour, la vie t'arrache à moi
もしもある日、人生があなたを私から引き離すなら
Si tu meurs, que tu sois loin de moi
もしあなたが死んで、私から離れてしまうなら
Peu m'importe si tu m'aimes
私には関係ない、あなたが私を愛してくれるなら
Car moi je mourrais aussi
私も死ぬだろうから
彼女の愛が引き裂かれる運命を予感させるものでした。
2024年パリ5輪で、演出家トマ・ジョリーは、開会式の最後のシーン、「Éternité 永遠」というタイトルで、この歌の最後の言葉を取り上げ、古代オリンピックが神々を讃える祭りだったことを受け継ぎ、オリンポスの神々が「愛する者たちを再び結びつける」姿を描きました。
Nous aurons pour nous l'éternité
私たちは永遠を手に入れるでしょう
Dieu réunit ceux qui s'aiment
神様は愛し合う者たちを再び結び合わせてくれるのです
「愛の賛歌」のフランス語訳と日本語訳
この歌の日本語訳では、越路吹雪さんの歌による岩谷時子さんの訳が有名です。
しかしフランス語と比べてみると、かなりの違いがわかります。
以下フランス語に近い訳を付けてみました。
Le ciel bleu sur nous peut s'effondrer
青い空が崩れ落ちようと
Et la Terre peut bien s'écrouler
地球が崩れてしまおうと
Peu m'importe si tu m'aimes
私には関係ない、あなたが愛してくれるなら
Je me fous du monde entier
世界のことなどどうでもいい
Tant qu'l'amour inondera mes matins
愛が私の朝を満たし
Tant qu'mon corps frémira sous tes mains
あなたの手が私の体を震わせる限り
Peu m'importe les problèmes
問題なんて気にしない
Mon amour, puisque tu m'aimes
私の愛しい人、あなたが愛してくれるなら
J'irais jusqu'au bout du monde
私は世界の果てまで行くわ
Je me ferais teindre en blonde
髪をブロンドに染めることだってするわ
Si tu me le demandais
もしあなたが求めるなら
J'irais décrocher la Lune
月を取りに行くし
J'irais voler la fortune
大金を盗むことだってするわ
Si tu me le demandais
もしあなたが求めるなら
Je renierais ma patrie
祖国を捨て
Je renierais mes amis
友達を捨てることだってするわ
Si tu me le demandais
もしあなたが求めるなら
On peut bien rire de moi
誰が私を笑おうと構わない
Je ferais n'importe quoi
何でもするわ
Si tu me le demandais
もしあなたが求めるなら
Si un jour, la vie t'arrache à moi
もしもある日、人生があなたを私から引き離すなら
Si tu meurs, que tu sois loin de moi
あなたが死んで、たとえ遠くにいようとも
Peu m'importe si tu m'aimes
私には関係ない、あなたが愛してくれるなら
Car moi je mourrais aussi
だって、私もあなたと共に死ぬから
Nous aurons pour nous l'éternité
私たちは永遠を手にするでしょう
Dans le bleu de toute l'immensité
広大な青空の中で
Dans le ciel, plus de problème
悩み事のない天国で
Mon amour, crois-tu qu'on s'aime?
愛しいあなた、私たちの愛を信じている?
Dieu réunit ceux qui s'aiment
神様は愛し合う者たちを再び結び合わせてくれるのです
以下が岩谷時子さんの訳です。 フランス語の歌詞とは全く違います。
あなたの燃える手で あたしを抱きしめて
ただ二人だけで 生きていたいの
ただ命の限り あたしは愛したい命の限りに あなたを愛するの
頬と頬よせ 燃える口づけを
交わすよろこびあなたと二人で 暮らせるものなら
なんにもいらないなんにもいらない あなたと二人で
生きていくのよ
あたしの願いは ただそれだけよ
あなたと二人固くいだき合い 燃える指に髪を
からませながら いとしみながら口づけを交わすの 愛こそ燃える火よ
https://plaza.rakuten.co.jp/1492colon/diary/201102200000/
あたしを燃やす火 心とかす恋よ